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高森明勅
2016.11.1 01:00

譲位排除の経緯も知らない「専門家」

有識者会議のヒアリング対象になった日本大学教授の古川隆久氏の
持論は、
「生前退位を認めるなら、退位後…
民間人になるのが一番いい」。
どうやら、
今の典範で譲位の可能性を排除した理由すらご存知ない
らしい。

理由の1つは、次のようなものだった。

将来野心のある天皇が現れて、退位して後、例えば
内閣総理大臣となり政治上の実権を壟断(ろうだん)
することも
予想できぬことでなく、かやうな例について考へれば、
天皇の生前退位
を認めることは、
かへつて改正憲法第4条第1項後段
国政に関する権能を有しない)の趣旨を骨抜きにするおそれがある」
(法制局「
皇室典範案に関する想定問答」)

笑い話のようでも、ご譲位後にもし「民間人」になられる
ルールが新たに作られたら、
どうか。

それまで全面的に制限されていた、国民としての権利と自由は当然、
全て認められることになる。

その場合、どんな政治家や芸能人も足元にも及ばない、
とてつもなく巨大な影響力を発揮されることは、想像に難くない。

国内のみならず海外のメディアも殺到するだろう。

出版社も懸命にアプローチするはずだ。

財界や各種文化団体、スポーツ界等々も接近を試みるだろう。

或いは宗教団体や政党なども。

だが民間人の活動に対して、政府も宮内庁も一切、
制限を設けることはできない。

そういうルールを作ることが将来、どのような事態を招くか。

古川氏は真面目に考えているのだろうか。

無知なのか、無責任なのか、その両方か。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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